カッティングシートの可能性を追求するデザインコンペとして、1982年からスタート、22回目となる今回で40周年を迎えた、株式会社中川ケミカル主催の「CS Design Award」。

「自然と街をつなぐブリッジデザイン」をテーマとしたCSデザイン賞の学生部門では、流山おおたかの森S・C 本館2Fと別館ANNEX1の3Fをつなぐ連絡ブリッジのガラスウォールのデザイン提案が課題となりました。

地上約7mに位置し、全長38mにもおよぶ連絡ブリッジは、外側から見た時は、空や植栽を背景とした街の景観の一部ですが、ブリッジの内側からは、街の景観を背景として視野に入ってくる横一面のガラスウォールです。そのため、「内と外」「遠と近」という2面的な条件を、デザイン的にどう解釈し、表現するかが大きなポイントとなります。

今回、金賞を受賞したのは、武蔵野美術大学・日本画専攻の丸山咲さんが手がけた「veins」。“脈・離れたものをつなぐもの”という意味を持つこの作品は、街と自然のつながり・共通項を探し、流山おおたかの森の街づくりの取り組みとその歴史を紐解く中で、街全体を上から撮影した写真を見た際に、道路が植物の葉脈のように張り巡らされているのに気づいたことから着想。

葉脈が葉全体に栄養を行き渡らせる造りになっているのと同様、道路もまた、人々が街の隅々にアクセスするためにつくられており、2つが類似構造になっているのは、同一の目的を追求した結果ではないかと気づいたそうです。流山おおたかの森も、街と自然が深い部分でつながり合ってできた場所であることから、その共通項である「脈」を作品のコンセプトと位置づけたそうです。

デザインは、街と自然のどちらにも寄らないニュートラルな印象にし、街の一部として溶け込むように、カッティングシートのカラーは白を選択。最もこだわったのが、一つ一つの丸の大きさと位置。葉脈に見えるよう微調整を繰り返しながら、さらにガラスに光が差し込んだ時に、木漏れ日のような影を床に映し、まるで木々の間を歩いているような感覚にするため、それぞれの丸の影がバランス良く重なり合うポイントを探したそうです。

自然と街のつながりをテーマに、「葉脈」の橋をかける:CSデザイン賞受賞者インタビュー - デザイン情報サイト[JDN]

受賞作品は、連絡ブリッジに展示されています。この機会にぜひ、ガラスウォールに描かれた美しい模様や床に映る木漏れ日の様子を、実際に目で見て、楽しんでみてください。