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ボタニカルパーク「GREEN PATH」設計

株式会社プランツスケープ
インタビュー vol.3

つくばエクスプレスの高架下に誕生した、ボタニカルパーク「GREEN PATH(グリーンパス)」――。高架下を、周辺施設をつなぐハブ機能を担う緑豊かな空間に変えるとともに、人と植物の関わりを深め、緑の環境価値を伝えていく場として活用する画期的な取り組みでもあります。

今回、企画・設計・植栽選定など、プロジェクトを総合的に担当した株式会社プランツスケープの小泉遼太さんに、プランづくりの起点となったイメージや設計意図、空間に込めた想いなどについて伺いました。

株式会社プランツスケープ 環境装飾部 部長

小泉 遼太さん

植物とデザインの力で“場”を豊かにし、そこに集う人々が幸福を感じる空間を創造するため、プロフェッショナルな技術と知識で、現代の都市環境における人と自然の関係を構築し、“緑”の魅力と効果を最大限高める新たな価値創造に取り組む。

インタビュー vol.1 自然の恵みを感じる、緑の拠点として インタビュー vol.2 この場所でしか、できないこと インタビュー vol.3 ワクワク感のある森

ワクワク感のある森

――この場所に植える植物の選定については、どのようなことに留意されたのでしょう。

もともと流山市は、市政として在来種を大切にしながら、街全体の緑のあり方を考えています。

私たちも、その基本姿勢に沿いながら、できるだけ、このエリアに自生する在来植物を多く取り入れつつ、一部、エリア外の種も加えていますが、その場合も、周囲の環境との連動性を考慮しながら構成しています。

具体的にはまず、日本の森に多い針葉樹を取り入れることで、この地域に住む人たちがイメージする森を表現しつつ、針葉樹だけでは面白みに欠けるので、鹿児島や沖縄といった、あまり目にすることのない南国の植物を入れることで、足を踏み入れた時のワクワク感も大切にしています。

――高架下ということで配慮したことはあるのでしょうか?

植物に必要な明るさについては、種類に応じたルクスと時間に関するデータがあるので、それを参考にしながら、現場の状況で判断しています。

最初に現地を訪れたのが真冬だったこともあり、日光を好む植物はなるべく避けながら、日照条件に適した植物を選んでいます。これまで弊社は、室内の庭造りに関する実績が多いので、その経験知とノウハウを植物選定に活かしています。

おおたかの森らしい、心地よい場所として

――「GREEN PATH」が今後、どのような場所に育ってほしいとお考えですか。

“PATH”ということで、枕木を利用したウッドデッキ風の道も設置しており、なるべく日常的な通り道として使ってもらいつつ、あえて歩道から逸れて、この道を通ることで、何かを発見したり、出会ったりしてほしい。高架下は雨よけの利点もあるので、雨が降り出したら、みんなが集まってくるといいですね(笑)。

そもそも植物をたくさん配置することで、木陰で人の目を気にすることなく、ゆったりくつろげる隠れ家的な空間を創りたいという意図があり、ベンチも多めに設置したいと考えていました。駅前の広場に使用されているパレットデッキは、座りやすくて、子供が遊ぶのにも適しているので、同じものをここにも入れています。

なので、誰もが座れるベンチで本を読んだり、昼寝したり、休んだりできる心地よい場所、みんなの憩いの場、ほっと息がつける空間として愛されながら、おおたかの森らしい場所に育っていってほしいですね。

街の機能として、また共用の場所として、気持ちがいい・面白い・心地よいという街の中の余白のような役割があると考えています。過密に開発された場所というのは息が詰まりますが、こうした空間があることで、誰もがひと息つけるのではないかと思います。

何より、勝手に集まって何かできるような場所にしたいなという思いがあって、昔から住んでいる人も新しく住み始めた人も、この場所で、自由に参加できる、何かしたくなるような場所になるといいと思います。例えば、イベントスペースで開催予定のマルシェは、個人参加の場合、ワンコインで1日、椅子とテント付きで場所を借りることができるので、気軽に参加することができます。

こう使いましょうと決めるのではなく、余白や余裕があって、いろいろできそうな雰囲気を醸し出している場所だと、自ずと何かしたくなり、自然発生的に面白いことが生まれるような気がします。そういう刺激を与えてくれる場所、可能性が生まれる場所になってほしいですね。

緑が、人と街にもたらすもの

――SDGsを達成していく上で、人と空間と緑の関わりがますます重要になっていくと思われますが、植物環境に関わる立場として、いかがでしょう。

植物や木材など、自然を感じる要素を空間に取り入れることで、そこに居る人の幸福度や生産性、創造性が高められる「バイオフィリックデザイン」という空間デザイン手法があります。

実際、Apple社などのグローバル企業では、社屋に緑をたくさん取り入れていますが、それは、そういう自然が及ぼす効果が数値的に証明されているからで、環境省の調査でも、緑化に取り組む企業の好感度が上がり、そこで働く人のウェルビーイングを気遣う企業のイメージが採用にも影響することが明らかになっています。

このように緑がもたらす効用が世界的な常識となる中で、大鷹の生息する流山おおたかの森から緑化の新しい取り組みを発信し、街における緑の存在価値を高めていくことは、街のブランドを高めることにもつながっていくはずです。

私たちのような植物環境を造る仕事は、設計者の方から声がかかることが多いのですが、毎回、いいものを造るという信念を持って臨んでいます。

自分たちの手がけた空間を訪れた人が、それをきっかけに植物を好きになり、価値を感じてくれたら、それが次の仕事につながり、その好循環で植物空間が拡がっていく。だからこそ、「ま、いいか」という安易な妥協で終わらせることなく、納得いくまで徹底した仕事をする。

私たちの役割は、仕事を通じて緑を増やし、世界を緑に変えていく、そういうSDGsとダイレクトにつながるものと考えています。

――ありがとうございました。

株式会社プランツスケープ
インタビュー

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森のまちから考える
SDGsとこれからのまちづくり

「SDGs」という⾔葉をご存知ですか︖
Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標 : SDGs)は、
簡単にいえば、誰もがしあわせに暮らし続けることができる世界を、
次の世代につなぐために、みんなでできることをしていこうという⽬標です。

そういわれても何をすればいいのだろう︖
自分にできることって、あるの︖
そう⼾惑う⼈もいると思います。

でも実は、とても⾝近な、⼩さなことから始められるものなのです。
わたしたち流⼭おおたかの森S・Cでも、⼩さなことから⼀つ⼀つ、
積み重ねていくことが⼤切だと考え、取り組みをスタートしています。
みんなが暮らす、この街を、もっとよりよいものにしていくため、
ぜひ⼀緒に、サスティナブルなまちづくりに取り組んでいきませんか︖