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ボタニカルパーク「GREEN PATH」設計

株式会社プランツスケープ
インタビュー vol.1

つくばエクスプレスの高架下に誕生した、ボタニカルパーク「GREEN PATH(グリーンパス)」――。高架下を、周辺施設をつなぐハブ機能を担う緑豊かな空間に変えるとともに、人と植物の関わりを深め、緑の環境価値を伝えていく場として活用する画期的な取り組みでもあります。

今回、企画・設計・植栽選定など、プロジェクトを総合的に担当した株式会社プランツスケープの小泉遼太さんに、プランづくりの起点となったイメージや設計意図、空間に込めた想いなどについて伺いました。

株式会社プランツスケープ 環境装飾部 部長

小泉 遼太さん

植物とデザインの力で“場”を豊かにし、そこに集う人々が幸福を感じる空間を創造するため、プロフェッショナルな技術と知識で、現代の都市環境における人と自然の関係を構築し、“緑”の魅力と効果を最大限高める新たな価値創造に取り組む。

インタビュー vol.1 自然の恵みを感じる、緑の拠点として インタビュー vol.2 この場所でしか、できないこと インタビュー vol.3 ワクワク感のある森

自然の恵みを感じる、緑の拠点として

「流山おおたかの森駅」周辺は、流山おおたかの森S・Cをはじめ、さまざまな商業施設が点在しています。しかし、つくばエクスプレスの線路によって、その往来が分断されてしまうため、高架下を利用して周辺一帯をつなぎ、行き来しやすくしたいというご相談を受けました。

2022年6月末オープンの「流山おおたかの森S・C ANNEX2」は、駅から少し離れた位置にあるため、周辺の施設を結ぶハブ的な機能を高架下に持たせたいと考えました。プランツスケープさんには、S・C館内の植栽の選定や管理もお願いしているので、その経験と実績を踏まえて、統一したイメージで「緑」を核としたプランをお願いしたいとお伝えしました。

流山おおたかの森駅周辺の施設 まちづくりストーリー より

ここに人が集まりやすい、足を運びたくなるような場をつくることで、周辺施設への橋渡しができると考え、「緑溢れる小径」をテーマに、人が交差しながら、周辺施設に行き来できるプランにしました。

もともと流山周辺は、昔の航空写真を見ても、緑豊かな場所だったことが窺えるので、そのイメージを取り戻し、このエリアを緑の空間に変えるために、「緑の帰還」というコンセプトで、無機質な高架下に緑の拠点を築き、植物の力で自然の恵みが感じられる空間を創出する。さらに、施設内のショップで購入した多彩な緑を持ち帰っていただくことで、ここから放射線状に緑のエレメンツが広がり、それぞれの場所でタネから新しい緑が生まれ、その緑の連なりが無限に拡大していく姿をイメージしました。

2005年 つくばエクスプレス開業当時の航空写真

これまで高架下の活用法といえば、居酒屋などの飲食店舗か駐輪場、小さな公園が主でした。しかし、この「GREEN PATH」が新しいモデルケースとなることで、緑の価値を最大限生かした空間づくりが、他の自治体にも広がっていくのではないかと期待しています。

今回は、つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道株式会社との共同による環境創造事業ですが、流山市が街づくり計画で進めているグリーンインフラ整備に沿った緑の価値創造が大きなテーマであり、高架下の新しい活用法として、一つのモデルケースになるものと考えています。

プランづくりの起点となったもの

――企画・設計に際して、何を手がかりにイメージや構想を広げ、プランを策定されたのでしょうか。

当初、3つのプランを考えました。高架下の支柱が一見、神殿の柱を想起させることから、一案は「バビロンの空中庭園」というプラン。もう一つが「プチ・トリアノン」。フランスのベルサイユ宮殿の庭園には、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットのために娯楽用の小宮殿が建てられましたが、その離宮をイメージし、子育て世代のお母さんたちにとってのシェルターになるような、日常から離れて優雅な時間を過ごせる施設というプランです。そして、3つ目がイギリスの「EDEN PROJECT」に着想を得た、今回のSDGsをテーマとしたプランです。

企画に携わったスタッフが海外に長く居た経験があり、文化遺産や破壊された環境を取り戻すための取り組みについて勉強していたことから、「EDEN PROJECT」のイメージを起点にプランを組み立てました。

エデンという名のプロジェクト

――「EDEN PROJECT」とは、どのようなものなのでしょうか。

イギリスのコンウォール州にある“環境保護”をテーマとした複合型環境施設です。「バイオドーム」と呼ばれる近未来庭園のような巨大な球体建築群からなり、この一連のドーム状の温室が世界最大の植物園で、内部に熱帯雨林や温帯多雨林、地中海性気候など、世界のさまざまな地域の環境が再現されています。

トロピカル・バイオーム内部。六角形のパネルで作られた外壁が特徴的。
©Stevekeiretsu - Inside the Humid Tropics Biome at the Eden Project, Cornwall.

もともとこのエリアは、陶土(カオリン石)の採掘場だったことから、一帯が60mの深さまで抉り取られ、土すら残っていない無残な場所になっていました。そこを再生し、広範な地域の生態環境を創出し、それに触れることで、自然環境における人と植物の関わりの重要性を見つめ直し、持続可能な発展をめざすことをテーマとした施設となっており、「EDEN PROJECT」は今、世界中に広がっています。

高架下プロジェクトが動いていたのは2年程前で、当時はまだSDGsが広く認知されていない頃でした。でも結果的に、このプランがいちばん心に響いたし、時代の流れを先取りした先見性のあるプランとして、私たちが思い描いていたプロジェクトの理念にもフィットしたと思っています。

株式会社プランツスケープ
インタビュー

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森のまちから考える
SDGsとこれからのまちづくり

「SDGs」という⾔葉をご存知ですか︖
Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標 : SDGs)は、
簡単にいえば、誰もがしあわせに暮らし続けることができる世界を、
次の世代につなぐために、みんなでできることをしていこうという⽬標です。

そういわれても何をすればいいのだろう︖
自分にできることって、あるの︖
そう⼾惑う⼈もいると思います。

でも実は、とても⾝近な、⼩さなことから始められるものなのです。
わたしたち流⼭おおたかの森S・Cでも、⼩さなことから⼀つ⼀つ、
積み重ねていくことが⼤切だと考え、取り組みをスタートしています。
みんなが暮らす、この街を、もっとよりよいものにしていくため、
ぜひ⼀緒に、サスティナブルなまちづくりに取り組んでいきませんか︖