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街をクリエイティブに使い倒す

#自然環境にやさしいまちづくり

流山おおたかの森S・C ANNEX2設計 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
原田真宏さん・原田麻魚さんインタビュー

2022年6月30日、B43街区にオープンした「流山おおたかの森S・C ANNEX2」は、食品、雑貨、家具など、日々の暮らしを支える各種店舗を擁する商業施設として、流山おおたかの森の新しい顔となりました。

施設の設計・デザインを手がけたMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)の原田真宏さん・原田麻魚さんに設計の意図や狙い、また、流山おおたかの森の街づくりと今後について伺いました。

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

原田真宏氏(写真:左)と原田麻魚氏(写真:右)が共同代表を務める設計事務所。

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街をクリエイティブに使い倒す

真宏さん

この街の人たちは、クリエイティブに場所を使う才能があると思います。

通常、“ここは、こう使いなさい”という場所の意味付けを規定しがちですが、ここには名前のつかない場所がたくさんあって、それがすごく面白い。

我々も、何とも使い方のわからないものをたくさん置いてみたのですが、みんな、すごく上手に使っている。井戸端会議のカウンターにしたり、宿題をやっている子どもたちがいたり、PCを開いている人がいたりと、街の人たちにクリエイティビティがあります。

受け身ではなく、自分たちで街を使い倒してやろうという、そういうところが若い街のパワーであり、良さかもしれません。

東神開発

FLAPSの通路側のウッドデッキのいちばん下は、階段になっていて、少し広くなっていますが、いつも誰かいます。しゃべっていたり、お弁当を食べていたり。

真宏さん

それがアナーキーに見えないのがいい。怖い雰囲気がまったくない(笑)。僕らが造ったものも、コンビニの前の車止めと、なんら変わりないですけどね(笑)。

東神開発

やはり、デザインのポイントに建築家が関わっている効果でしょう。

真宏さん

陰性ではなく、陽性にしようとはしていて、風がそこで留まらないようにするとか、暗がりにならないようにとか、そういうことに配慮しつつ、でも、好き勝手に使って、という顔にしている。

実は計画的に作られた都市には、主体性を発露できる空間というのは、すごく少ない。やることがあらかじめ決められていますからね、すべて。

麻魚さん

安全性と主体性の捉え方は重要です。少しでも危険があると安全性を理由に過剰に管理してしまいがちですが、どの程度まで使い手の主体性を信用するかによって人と場所の関係性は変わってくる。

ずっと制限や規制をされていると、人の主体的な振る舞いはなかなか出てこなくなってしまいます。その中で流山は比較的ユーザーと管理者の信頼関係が結ばれている。だから、自然に主体性が育まれているんだと思います。それが、街の活気ある風景としても現れています。

今は広場内の丸い舞台を囲うフェンスがありますが、信頼関係の中で制限ではない解決策が生まれることに期待したいです。

手を伸ばし、つながっていく

真宏さん

15年経っても、まだ新しい施設ができていて、住民もそれに期待していて、何より、すべての建築の佇まいが違うというのは、街として豊かです。

麻魚さん

建築家を起用するところも、他と違うところですね。

真宏さん

何というか、巻き込む力みたいなものがあるような気がする。僕らは巻き込まれちゃった感じですよ(笑)。

この街では、面倒を見続けなければいけない気持ちになってしまいます。それは多分、将来像を押し付けられていないからです。

麻魚さん

1つの建築のデザインのみならず、建築家の視点から街に対して、こうしたらいいのではないかという提案ができる。だからこそ参画感も出るし、ここからどうなっていくのか、その期待感も大きいですね。

東神開発

街の発展は変わらず続いていくと思いますが、今後、どうなっていくといいのか、何かしらヒントになることがあれば、伺いたいと思います。

真宏さん

パブリックスペースがうまく造られている街だと思っていて、今、我々は次の仕事として流山市と通りのデザインを進めています。

麻魚さん

「コトエおおたかの森」を曲がって、「GREEN PATH」の高架下をくぐって、交番の前を通り、「ANNEX1」の横を通る道のデザインです。

GREEN PATH

真宏さん

通り沿いに、一畳くらいの居場所を点在させていくような造り方をするのですが、そうしたマイクロパブリックスペースみたいなものと連動するような建築計画が大切だと思っています。

これまでの街づくりというのは、パブリックスペースはパブリックスペース、道路は道路、建築は建築という、それぞれが独立した造り方がなされてきましたが、流山おおたかの森型の街づくりというのは、パブリックスペースを持った建築、つまり、周りに手を伸ばし、つながっているような建築の群れで全体を構成している。

そういうことが完遂できたら、未来の都市づくりに向けて、すごく魅力的な雛形になると思います。

次の世代につないでいくために

麻魚さん

例えば、普通のマンションだと、玄関ドアの向こうだけが自分の家ですが、流山おおたかの森では、駅を降りて、家に至るまでの道、お店、ベンチ含めて、自分のホームタウン、家であり、街になったら良いと考えていて、そういう愛着形成ができる受け皿として、街や道を考えています。

今育っている子どもたちが今後定住するかどうかが、街にとって重要な分岐点になる中で、自分の家だけでなくこの街自体に愛着が形成されるのであれば、2世3世にとっても定住したい街になっていくと思います。

例えば、パブリックスペースにリビングがある、街の中に自分の食卓がある、というように、家以外に居場所があるようなネットワーク型の生活が実現しやすい状況が整っていれば、街に愛着が湧き、住み続けたいと思ってもらえるようになるのではないでしょうか。

流山おおたかの森駅南口都市広場リニューアル

セミプライベートな外空間を楽しむ、まちのリビングルームとして

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真宏さん

流山の人口分布図は、若年層が多いかたちになっているので、やがて、その世代が老年化していく事を考えると、その手立てを打っていかなければならないでしょう。

麻魚さん

その意味でも、2世3世にも居続けてもらえるよう、本当の意味でのホームタウン化していくことは大切です。

真宏さん

自分の家や店は小さくても、外のスペースが自分の家や店のセカンダリーな勉強部屋になっていたり、客席になったりということなら、それはエリア全体にとっての価値でもあります。

麻魚さん

今、通りのデザインをしているのですが、それは“道”のデザインだけではなくて、居場所のデザインでもあるんですよね。

真宏さん

エリア全体の価値という考え方の中で、自分たちの個々の計画を位置づけるというのは、すごく高度なことです。自分の敷地の中だけで最大床面積をとって賃貸に出した方が、普通にそろばんを弾くなら、儲かるわけです。

でも、エリアの魅力があれば、面積あたりの賃料も上がる。エリア全体の戦略で個々も利益を得る、そのエリア全体の利益を考える主体が東神開発だったり、行政だったり、そういう存在が流山に居てくれることが、多分大事なんだと思います。

もし、自分の敷地・境界以外のことなど知ったことかという人たちの集まりで街を造ったら、とんでもなくプアな街区になっていたと思います。

でも、ここはエリアの価値を高めることを正とする受益者が開発を担っており、その価値を小さな商店や小規模マンションの人たちもわかって共有できているのが強み。それをつないでいく文化というのは、残していきたいですね。

麻魚さん

発注の仕方というか、設計に要求する内容も重要ですよね。例えば、商業施設としての合理性だけを求めていると、合理的な売り場面積とコストばかり評価されて、それ以外のことはなかなか実現されにくい。

建築家は、街のことやそれ以外のことにまで興味が広がっているので、その視点や価値も評価することで、街に重なりと広がりが生まれると思います。

真宏さん

全国的な標準型・汎用型というものでは、もはや収まりきらない、対応できない時代になってきたのだと思います。

もう一度、その土地ごとの型を作るところから始めなければならないし、それが建築家としての喜びでもある。

麻魚さん

私たち建築家が存在する意味も、そこにあると思っています。

―― ありがとうございました。

森のまちから考える
SDGsとこれからのまちづくり

「SDGs」という⾔葉をご存知ですか︖
Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標 : SDGs)は、
簡単にいえば、誰もがしあわせに暮らし続けることができる世界を、
次の世代につなぐために、みんなでできることをしていこうという⽬標です。

そういわれても何をすればいいのだろう︖
自分にできることって、あるの︖
そう⼾惑う⼈もいると思います。

でも実は、とても⾝近な、⼩さなことから始められるものなのです。
わたしたち流⼭おおたかの森S・Cでも、⼩さなことから⼀つ⼀つ、
積み重ねていくことが⼤切だと考え、取り組みをスタートしています。
みんなが暮らす、この街を、もっとよりよいものにしていくため、
ぜひ⼀緒に、サスティナブルなまちづくりに取り組んでいきませんか︖