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凝縮された15年が育んだもの

#自然環境にやさしいまちづくり

流山おおたかの森S・C ANNEX2設計 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
原田真宏さん・原田麻魚さんインタビュー

2022年6月30日、B43街区にオープンした「流山おおたかの森S・C ANNEX2」は、食品、雑貨、家具など、日々の暮らしを支える各種店舗を擁する商業施設として、流山おおたかの森の新しい顔となりました。

施設の設計・デザインを手がけたMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)の原田真宏さん・原田麻魚さんに設計の意図や狙い、また、流山おおたかの森の街づくりと今後について伺いました。

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

原田真宏氏(写真:左)と原田麻魚氏(写真:右)が共同代表を務める設計事務所。

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凝縮された15年が育んだもの

東神開発

街の変遷を、建築家として、どのように見ていらっしゃいますか?

麻魚さん

しりとりのように前のプロジェクトを次のプロジェクトが引き受けて、それをまた次が引き受けるということを繰り返していくことで、凝縮された15年間になったのでしょうね。

それぞれが孤立することなく、何かしら関係性を育もうとする姿勢が、たぶん人を受け入れる街並みとして育った大きな理由だと思います。

他の街の50年分くらいの蓄積が、ここでは15年分に凝縮されている、そういう気がします。

真宏さん

自然発生的な気持ちのいい街というのは、歴史の蓄積によってできていくものですが、ここは、それをぎゅっと15年に凝縮し、対話の関係でつながるということをしてきた。だから、新しい街だけど、多様性がちゃんとある。

東神開発

この「ANNEX2」で開業から15年に及ぶ周辺開発に一旦区切りがつきましたが、もちろん今後も開発を続けていくつもりです。

流山おおたかの森駅周辺の施設 まちづくりストーリーより

麻魚さん

ほんと、これからですよね。中心地の盛り上がりができて、いい感じで共鳴しあっているものを、さらに周辺と関係づけ、広がっていくといいですね。

真宏さん

ここは、すごく特殊な地域で、だいたいデベロッパーと行政と市民は対立しがち(笑)。でも、みんなすごく認め合っていて、期待し合っている。3者で街を盛り上げながら、育ってきた。SNSなどでも、市民が楽しみにしているというのがよくわかります。

麻魚さん

「FLAPS」を建てている時、階段の上から定点撮影してくれている地域の方がいて、すごく助かりました。

真宏さん

街の開発手法が全体計画に基づいて、こう実現しなさいという高圧的なやり方ではないからね。

麻魚さん

15年前に決めたコンセプトを頑なにやり遂げていくのではなくて、毎回、周辺のことも考えながら、コンセプトもバージョンアップされている。そのやわらかさも地域の人達と共鳴するポイントだと思います。

真宏さん

大規模な開発になると、何年も工事が続いて、いつ終わるの?というような世界になっていて、その間に、人も期待感も絶えてしまう。

でも、ヒューマンスケールの規模と時間で積み上げながら造っていく街づくりなので、人の気配が絶えないし、人々の期待値も途切れないというのも大きいと思います。

反転した価値観

―― 流山市の井崎市長に取材でお話を伺った際、ご自身が海外で都市計画のコンサルに携わっていた経験から、流山の地形の面白さが気に入って越してきたという話をされていました。この土地の面白さを見つけた人が共感して集まってくることで、ビジョンが共有され、広まっているのではないかと感じます。

真宏さん

井崎市長は、次世代型のリーダーみたいな感じがしますよね。強いリーダーシップももちろんあるけれど、むしろ共感ベースで仲間を増やしていく感じ。

麻魚さん

一人ひとりが、自分にとって心地よいところを探す、生きる場所を選べる。住む場所に関しては、そういう時代的な背景もあるかもしれませんね。

「どこで生きるか」という、根源的な問いに対して、心地よいと思える地形や気候などが大切になると思うんですよね。縄文土器も出土しているから、実は太古の昔からそうだったのかもしれませんが、ポテンシャルがあってここが新しいまちづくりの場所になり得たのでしょう。

TXも走るようになって、時代の流れや場所性、交通の便といったものがかみ合わさった結果でもありますよね。

真宏さん

確かに世の中が反転した感じはありますね。日本全国同じ手法の都市開発を進めてきたわけですが、どこへ行っても同じ景観ばかりになって、それがずっと続いてきた。

2:8の原理で、8に適した都市でも、全部が8になってしまうと、2に属する人たちの居場所が無くなる。でも、ここは日本全国標準型の都市開発という上からかぶせる手法ではなく、下から自然に生まれてきたような開発手法。

その反転が明瞭になったことで、エッジが利いて、他にない価値になったのだと思います。特に南口の駅前に車を入れないというのも、明確な反転ですし、自然を排除するという今までのやり方に対し、自然を重ねるというのも、明瞭な反転です。

そういう今までの8に適した都市では居場所を見つけられなかった人たちにとって、ここは、非常に魅力のあるエリアになったのかもしれません。

麻魚さん

潜在的には求められていた街が、選択肢の中に現れたことで、多くの人に選ばれている。

真宏さん

そういう多様で性格の異なる場所って、歴史的な地域にはあるけれども、新しい街で実現できているところがすごい進化だと思います。

麻魚さん

選ばれているという意味で、価値を共有した人たちが自然と集まってきているので、どこかから与えられた街づくりの方向性ではない、独自の方向が共有されやすいのかもしれませんね。

最初の一手で決まった方向性

真宏さん

通常、価値を共有した人たちが集まる新しい都市を創る場合、いわゆる標準化されたものにしがちです。

みんなを受け止めるわけだから、標準的な人物像に適した街にしようとする。だから、均質な街になってしまう。でも、ここは、最初の一手二手にキャラクターがあったんでしょうね。

そこでちょっとした個性みたいなものに惹かれて集まってきた人たちによって、その傾向が更に強められ、均質な方向ではなく、個性が高まる方向に舵が切れたのが大きかったと思います。

麻魚さん

始めた時は、ちょっとした角度だったエッジが連なっていくことで、価値観や方向性が磨かれたのかな。

真宏さん

それもまた、一大都市開発ではない手法のメリットかもしれない。ちょっとした振れ方で始めて、その振れ幅がだんだんと大きくなっていくやり方ができた。

麻魚さん

もし、標準化された街へ向かう価値観でスタートしていたら、街は今とは異なる街になっていたでしょうし、その意味では、最初の一手は、重要でしたね。

今の東神開発の倉本社長が、2007年当時の担当者だったんですよね?

真宏さん

ミニ都会型の施設が地方にやってくる場合、最初は都会がやってきたみたいな喜びがあっても、先端と思われるものほど、賞味期限が短い。10年、15年で、みんな心が他に移ってしまうのですが、その10年、15年の間に中心市街地の商店街は廃れてしまう。

でも、流山おおたかの森の手法がいいのは、賞味期限のない都市開発の手法だからです。ずっと居てくれるし、回遊型の都市なので、周りの商店にもお客さんが行くようになる。

そうした持続的に価値が上がり続けていく都市開発手法として、とてもいいモデルだと思います。

流山のモデルケースとなった玉川高島屋S・Cは、1969年に日本初の本格的郊外型ショッピングセンターとしてオープンした施設ですが、この時の二子玉川の街づくりも、周りの商店街が廃れない、街の共感を得られるものでした。

第4回へつづく

森のまちから考える
SDGsとこれからのまちづくり

「SDGs」という⾔葉をご存知ですか︖
Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標 : SDGs)は、
簡単にいえば、誰もがしあわせに暮らし続けることができる世界を、
次の世代につなぐために、みんなでできることをしていこうという⽬標です。

そういわれても何をすればいいのだろう︖
自分にできることって、あるの︖
そう⼾惑う⼈もいると思います。

でも実は、とても⾝近な、⼩さなことから始められるものなのです。
わたしたち流⼭おおたかの森S・Cでも、⼩さなことから⼀つ⼀つ、
積み重ねていくことが⼤切だと考え、取り組みをスタートしています。
みんなが暮らす、この街を、もっとよりよいものにしていくため、
ぜひ⼀緒に、サスティナブルなまちづくりに取り組んでいきませんか︖